【塩ビとは?】 塩ビの特徴と性質、用途、基本データについて解説します
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塩ビ
工業製品だけでなく靴やかばん、文房具など様々な用途に使用されており、私たちの生活に欠かせない材質となっている「塩ビ」。配管においてもパイプや継手として生産・流通しています。
今回はそんな塩ビについて、詳しく解説していきます。
※本記事は、塩ビメーカーの品質保証部門からご提供があった資料をもとに、フローバル株式会社が編集・更新しております。
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塩ビとは?
まず、塩ビとはどんなものなのでしょうか?
塩ビとは、塩化ビニル、または塩化ビニールなどとも呼ばれている俗称であり、塩ビといえば一般には、「ポリ塩化ビニル」あるいは「塩化ビニル樹脂」のことを指します。
塩化ビニルは1931年にドイツで誕生し、日本では1941年に初めて工業化されました。塩化ビニルの特性として、長期間にわたり強度を維持できる安定性、劣化しにくい耐久性、優れた接着性などが挙げられます。また、ほかのプラスチックが可燃性であるのに対し、塩化ビニルは例外的に、燃えにくい難燃性というところがあります。
ポリ塩化ビニルとは、英語では『polyvinyl chloride』であり、PVCという呼び名でも広く知られている一般的な合成樹脂(プラスチック)材料の一つで、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などとともに熱可塑性樹脂(※)の代表です。
(※)熱可塑(かそ)性樹脂とは、融点あるいはガラス転移温度まで加熱することによって柔軟になり、目的形状に成形できる樹脂のことをいいます。代表的な熱可塑性樹脂には、塩ビ(ポリ塩化ビニル)のほかに、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、テフロン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、アクリル樹脂(PMMA)、AS樹脂などがあります。
ポリ塩化ビニルは、単量体(モノマー)である塩化ビニル(クロロエチレン)を重合(付加重合)させた合成樹脂になります。
俗に「塩ビ」や「塩化ビニール」と呼ばれるこのポリ塩化ビニルは、上述の単量体(モノマー)である塩化ビニル(クロロエチレン)と混同されるので、この単量体である塩化ビニル(クロロエチレン)のことを、とくに塩化ビニルモノマーと呼んで区別する場合があります。
※以降の説明において、とくに断りなく「塩ビ」という場合には、上述の塩化ビニルモノマーではなく、ポリ塩化ビニル(PVCあるいは塩化ビニル樹脂)のことを意味するものとします。
塩ビの特性などの基本データとしては、以下などが知られています。
塩ビ 基本データ
正式名 | ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC) |
---|---|
原子番号 | 29 |
組成式 | [-CH2-CHCl-]n |
密度(比重) | 約1.4g/cm3 |
融点 | – |
沸点 | – |
揮発性 | – |
溶解性 | 水に溶解しない |
引火温度 | 391℃ |
着火温度 | 455℃ |
可燃性 | 自己消化性樹脂 |
酸化性 | 安定(常温) |
塩ビの用途
塩ビは、その経済性や耐久性、加工性の良さ、自己消火性、省資源性などから、金属やガラス、木材、天然繊維などに代わる軽くて丈夫なプラスチックとして、近年では世界的に広く一般に普及している重要な素材になっています。
塩ビの主な用途としては、上水道管・下水道管用のパイプや電力線(電線被覆)、建築資材(建具、壁装材、雨どい、床材、窓枠、デッキなど)、農業用資材(園芸ハウス、農業用フィルムなど)、排気ダクトなどの工業資材、医療用器材、自動車や家電部品、食品包装材、文房具雑貨などの日用品に至るまで、非常に広範囲な分野でなくてはならない資材として利用されています。
塩ビの特徴・性質など
塩ビは、主に難燃性、耐久性、耐油性、耐薬品性に優れるなどの特徴が挙げられます。
引火・着火・延焼しにくい
塩ビは、引火温度が391℃、着火温度が455℃であり、紙や木材・塩ビと同じ熱可塑性樹脂であるポリエチレン(PE)などに比べ、引火・着火しにくい(難燃性がよい)材料といえます。
また、以下のように、塩ビは、ほかのプラスチックと比較すると燃焼による放熱量が極めて小さく、延焼しにくい性質があるため、難燃性が要求される住宅用建材などに利用されます。
最大放熱量の比較 ※以下括弧内の数値が最大放熱量(単位:kW/m2)
塩ビ | (91) |
---|---|
難燃ABS | (250) |
難燃ポリスチレン | (315) |
ABS | (746) |
ポリスチレン | (859) |
ポリエステル | (1216) |
ポリエチレン | (1325) |
ポリプロピレン | (1335) |
薬品や油に強い
塩ビ樹脂は、耐薬品性に非常に優れており、酸やアルカリをはじめ、ほとんどの無機薬品に対して高い薬品性を持ち、有機溶剤にも溶けにくい特徴があります。
(※ただし、香族系の炭化水素類やケトン類、環状エーテル類などには膨潤あるいは溶解します)
塩ビは、このような耐薬品性・耐油性が良好な特徴を利用して、プラントなど工業設備の排気ダクトやチューブ(ホース)などに利用されています。
耐久性に優れる
塩ビは、空気中の酸素による酸化反応に対する抵抗力が極めて高く、長年にわたってその性能を保持することができる耐久力を持つプラスチック材料です。
例えば、耐用年数は50年以上といわれる硬質塩ビ管ですが、実際、最長35年間土中に埋設して使用されていたものも、劣化せずに未使用品と同等の強度を示したという実証データもあります。
塩ビは、このように耐久性に非常に優れているため、長寿命製品の素材に適しているとともに、リサイクル性に優れた素材であることから、さまざまな分野で広く普及しています。
塩ビが酸化反応に極めて強いのは、塩ビの分子構造が炭素鎖の1個おきに塩素原子が結合した分子構造になっているためです。
塩ビ以外の汎用プラスチックで、構成元素が炭素と水素だけの樹脂は、長期の使用における酸化劣化は避けることができません。
機械的強度が変化しにくい
塩ビは耐食性にかかわる化学的安定性に優れていることに加え、機械的強度も長期間にわたって維持できるという機械的な安定性にも優れた特性を持つプラスチック素材です。
一般に、粘弾性体(粘性と弾性の両方の性質を持つ材料のこと)である高分子材料は、降伏点以下であっても外力を加え続ければ変形を起こします(クリープ変形)。
塩ビも粘弾性体ですが、塩ビは常温では分子運動が少ないので、非結晶部分の連動が多いポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)と比較すると、クリープ変形が極めて小さい材料です。
加工性・成形性が良い
塩ビは、溶融粘度が比較的大きいため大型の射出成形には適しませんが、溶融状態での粘弾性挙動の温度への依存性が比較的小さく安定しているため、複雑な断面構造の異形押出しや、農業用フイルム・塩ビレザーなどのカレンダー加工が可能なプラスチック素材です。
また、曲げ加工や溶接、高周波接着、真空成形などの二次的な加工性にも優れています。
物性を調整できる自由度が高い
塩ビは、可塑剤や各種の添加剤、改質剤、着色剤などと配合するによって、柔軟性や弾性、耐衝撃性、防汚染、抗菌などの使用時の要求物性を自由に、幅広く且つ連続的に調整することが可能な樹脂素材です。
配合による使用時の要求物性が調整可能な性質は、リサイクルの面からも極めて有利な性質といえます。
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