【継手とは】 材質・用途別に継手の種類を解説します
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管継手・フランジ
配管同士をつなぎ合わせる際に使用する継手は、用途や仕様、材質によってさまざまな種類があります。
パイプやチューブ、ホース同士をつなぎ合わせるものを総称して「継手(つぎて)」と呼びます。
▼継手 イメージ図
ですのでエルボやソケットだけでなく、フランジやパッキンなども広い意味では全て継手ということになります。
継手は、ジョイントやコネクターといったさまざまな呼び方があります。ワンタッチタイプの継手はカップリング(coupling)やクイックカップリング(quick coupling)などの名称で呼ばれており、とくに押しボタン式継手はサムラッチ(thumb latch)式と呼ばれることもあります。
まずは材質別に継手をみていきます。
目次
工業用に広く使われる「黒継手(くろつぎて)」
一般的な配管に用いられることの多い「ねじ込み式黒継手」。可鍛鋳鉄(かたんちゅうてつ)製の管継手です。表面の処理はされていません。水、油、蒸気、空気など、主な流体に対応しています。
めっき加工されている「白継手(しろつぎて)」
黒継手と白継手の違いは、表面にめっき加工がされているか、いないかです。材質は同じ黒心可鍛鋳鉄(こくしんかたんちゅうてつ)製ですが、白継手のほうは表面にめっき加工(溶融亜鉛めっき)がされており、錆びや腐食を防ぐようにつくられています。
写真のように、めっきされた当初は亜鉛の光沢がみられますが、時間が経過し、風雨にさらされると酸化被膜ができて白くなることから、白継手と呼ばれます。
適用流体は水、油、蒸気、空気に加え、冷温水や冷却水、工業用水などにも対応しています。
溶融亜鉛めっきとは
溶融亜鉛めっきは鋼材の防錆処理の一種です。460℃以上の高温で溶かした亜鉛槽の中に浸して、表面に亜鉛の被膜をつくる処理をします。配管を扱う業界では、亜鉛めっきの槽に浸ける様子から、俗に「ドブづけ」と呼ばれます。
白継手の接続
ねじサイズ1/2同士を接続します。
※写真ではそのまま接続していますが、通常配管する際は、外ねじ部分にシールテープを巻いてねじ込みます。
▼エルボとロングニップルの接続
▼チーズとロングニップルの接続
▼ソケットとロングニップルの接続
優れた耐食性を持つ配管の主役「ステンレス継手」
▼ステンレス製ねじ込みエルボ 3/8(メーカー:フローバル)
ステンレス継手とは優れた耐食性を持ち、普及率が非常に高く、建築・プラント・原子炉などに広く使用され、配管の主役とも呼べる商品です。
通称として「ステン」や「SUS(サス)」と呼ばれています。ねじ込みや溶接などの形状があります。
ステンレス鋳鋼品の性質・用途
材質 | 代表成分系 | 性質および用途 | 備考 |
---|---|---|---|
SCS13 | 18Cr-8Ni | ステンレス鋼・耐熱鋼として最も広く使用。食品設備、一般化学設備、原子力 | SUS304相当品 |
SCS14 | 18Cr-12Ni-2.5Mo | 海水をはじめ、各種媒質に304より優れた耐食性がある。耐孔食材料 | SUS316相当品 |
SCS16 | 18Cr-12Ni-2.5Mo-低C | SCS14の極低炭素鋼、耐粒界腐食性、耐孔食性をもたせたもの溶接後熱処理できない部品類 | SUS316L相当品 |
SCS19 | 18Cr-9Ni-低C | SCS13の極低炭素鋼、耐粒界腐食性に優れる溶接後熱処理できない部品類 | SUS304L相当品 |
SCS11 | 25Cr-4.5Ni-2Mo | 二相組織を持ち、耐酸性、耐孔食性に優れ、かつ高強度を持つ。排煙脱硫装置など | SUS329J1相当品 |
SCS10 | 22Cr-5Ni-3Mo-低C | 硫化水素、炭酸ガス、塩化物などを含む環境に抵抗性がある。油井管、ケミカル・タンカー用材、各種化学装置など | SUS329J3L相当品 |
SUS317相当品 | 18Cr-12Ni-3.5Mo | 耐孔食性がSCS14より優れている。染色設備材料など | SUS317相当品 |
耐熱鋼鋳鋼品 | 耐熱鋼 | SCH13、SCH21、SCH22などの耐熱鋼 |
▼ステンレス製ねじ込みチーズ 3/8(メーカー:フローバル)
▼ステンレス製ねじ込みソケット 3/8(メーカー:フローバル)
▼ステンレス製ねじ込み六角ニップル 3/8(メーカー:フローバル)
▼ステンレス製ねじ込み片長ニップル 3/8(メーカー:フローバル)
ステンレス継手の接続
ねじサイズ3/8同士を接続します。
▼エルボとロングニップルの接続
▼チーズとロングニップルの接続
▼ソケットとロングニップルの接続
水洗便所の給水管や便器スパッドで活躍「黄銅製継手(おうどうせいつぎて)」
▼黄銅製ねじ込み継手 エルボ 3/8(メーカー:フローバル)
黄銅は真鍮(しんちゅう)ともいい、主に銅(Cu)と亜鉛(Zn)の合金で、一般的に銅が65%、亜鉛が35%ほどの合金のことを指します。一番身近なところでは、五円硬貨が黄銅製です。このほか仏具や金管楽器などで使われています。配管ではトイレの給水管や洗浄管、便器の給水スパッドでみることができます。
▼黄銅製ねじ込み継手 チーズ 3/8(メーカー:フローバル)
▼黄銅製ねじ込み継手 六角ソケット 3/8(メーカー:フローバル)
▼黄銅製ねじ込み継手 六角ニップル 3/8(メーカー:フローバル)
水、油、空気などの流体に対応しています。
黄銅製継手の接続
ねじサイズ3/8同士を接続します。
▼エルボと六角ニップルの接続
▼チーズと六角ニップルの接続
▼六角ソケットと六角ニップルの接続
黄銅よりも高品質「青銅製継手(せいどうせいつぎて)」
▼エルボ GL‐04‐NPB 1/2(メーカー:フローバル)
青銅は砲金(ほうきん)ともいい、銅(Cu)と錫(すず Sn)の合金です。黄銅よりも強度、硬度、耐力に優れています。海水に対する耐食性がよく、耐摩耗性にも優れています。
身近なところでは、十円硬貨に使われています。十円硬貨は銅の成分が少し多く、銅95%、錫1~2%、亜鉛3~4%の構成になっています。オリンピックの銅メダルもこの青銅でできています。置物のブロンズ像も青銅製です。硬さと強度は鉄よりも劣りますが、錆びにくいという大きな特徴があります。
冷温水、冷却水、給水、給湯などの流体に対応しています。
青銅製継手の接続
ねじサイズ1/2同士を接続します。
▼エルボと六角ニップルの接続
▼ソケットと六角ニップルの接続
▼チーズと六角ニップルの接続
黄銅と青銅の違いとは
黄銅(真鍮=しんちゅう)と青銅(砲金=ほうきん)の大きな違いは、銅とその他の金属の含有比率です。青銅の方が銅の含有率が高いため、赤味を帯びており、価格も高くなります。
- 黄銅(真鍮=しんちゅう):銅(Cu)65%、亜鉛(Zn)35%
- 青銅(砲金=ほうきん):銅(Cu)90%、錫(すず Sn)10%
腐食されにくい「樹脂(PP)製継手」
▼ワンタッチ ハーフエルボ ミリサイズ 適用チューブ外径6φD R1/4(メーカー:フローバル)
樹脂(PP)でできているため、腐食に強い継手です。反面、熱に弱いという特徴があります。
上記の商品は、チューブとの接続や切り離しがワンタッチで可能な、利便性の高い継手です。
たとえばエルボは、チューブ配管を直角に曲げて配管します。ねじを締め付けた後、方向を動かせる機能がついた仕様のものもあります。
パッキンおよびOリングを内装しており、ねじ部はフッ素樹脂コーティング済みです。
適用チューブ材質はポリウレタンおよびナイロンです。
流体は空気のみとなっており、空気以外の気体や液体には対応していません。
ユニオンは、配管同士を繋ぎ合わせる継手なので、延長時にも重宝します。
▼ワンタッチ ユニオンチーズ 適用チューブ外径6φD(メーカー:フローバル)
▼ワンタッチ ユニオン 適用チューブ外径6φD(メーカー:フローバル)
▼ワンタッチ コネクター ミリサイズ 適用チューブ外径6Φ R1/4
内部部品に六角穴が設けられているので、継手を六角レンチで締めることができ、
狭い場所での配管にも便利です。
チューブの取り付け方
ナイロンチューブ(Φ6×4)と接続してみます。
ハーフエルボの接続口をよく見ると、ツメがついているのが分かります。
接続口をチューブと逆方向に寄せると、ツメが倒れ、チューブが入っていきます。
必ずチューブが奥にあたるまで確実に挿入してください。挿入後、チューブを軽く引張り、チューブが抜けないことを確認してください。
※取り付け方法を誤ると、空気の洩れやチューブの緩みが発生するおそれがあります。
汎用性・価格・強度、全てに優れた万能継手「塩ビ継手」
PVC(ポリ塩化ビニル、塩ビ)は、一般的にビニールや塩ビという名前で呼ばれています。プラスチック素材の中でもとくに加工性に優れており、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などとともに、汎用樹脂として広い分野で使用されている素材です。
強度や耐候性にも優れ、また硬軟両方の形状をとれるという点から、さまざまな用途に使用されています。加熱すると柔らかくなり、成形できる「熱可塑性樹脂」に分類されます。また加熱だけでなく、「可塑剤」と呼ばれる薬品を添加することにより、樹脂の硬さを自由に変えることができます。
重量が軽く、価格も比較的安価であることから、水道用のパイプにも使われています。
反面、有機溶剤に弱く、また高温、低温、両方に弱く使用温度範囲が狭いことが短所にあげられます。
給水・給湯配管の新定番「架橋ポリエチレン管継手」
架橋ポリエチレン管は、いわゆる樹脂管です。
近年では屋内の給水給湯配管として、追い焚き配管や、床暖房用温水配管、また温泉の給湯配管としても使われています。
接着剤やロウ付けが必要なく、継手に差し込むだけで施工できる手軽さと、柔軟性・耐熱性・耐食性・耐震性に優れることなどから、短期間で広く普及しました。
架橋ポリエチレン管の特長
- 耐食性:酸、アルカリ、薬品などに優れた耐食性を示し、錆の心配がありません
- 耐塩素水性:水道水使用の条件である、耐塩素水性に優れています
- 保温・保冷性:熱伝導率が銅管や交換に比べて小さく、管内流体の保温・保冷性に優れています
- 広い使用温度範囲:耐寒性、耐熱性に優れています。高温で長時間使用しても強度の低下はほとんどありません
- 安定した流量:パイプの内側が非常に平滑で摩擦抵抗が小さく、スケールが付着しにくくなっており、長期にわたって安定した流量が確保されます
- 電気絶縁性:金属管のような電食の心配がありません
- 衛生的:有害物質の溶出や赤錆・青錆などによる水質汚濁がなく、また化学的に安定していますので、長期間衛生的です
- 強度:水道用はもちろん、給湯用として長期間利用できます
- 耐環境劣化:プラスチック材料の欠点とされる環境応力亀裂(ESC)に対し、優れた性能を有し、長期にわたって劣化がほとんどありません
- 強いパイプクリープ特性:長期にわたりパイプ内に圧力をかけたまま放置した際に起こる塑性変形量(クリープ現象)が小さく、破損しにくい材質です
- 施工が簡単:材質自体が軽量で柔軟なため、切断・接合・曲げ配管が容易です。とくに小口径は長尺のため、引き回し配管が簡単にできます
架橋ポリエチレンとは
「架橋」ポリエチレンとは、ポリエチレンの一種です。
一般に給水給湯配管に使用できる架橋ポリエチレン管としては、日本工業規格 JIS K6769(架橋ポリエチレン管)と、JIS K6787(水道用架橋ポリエチレン管)があります。
現在一般的に屋内用給水給湯配管として出回っているのは、ほとんどがJIS K6769(架橋ポリエチレン管)の、PN15、M種と呼ばれるものです。
(※PN15とは最高使用圧力1.5Mpaを、M種というのは構造が単層で、メカニカル継手を使用して接合するということを表しています)
そもそも架橋とは?
素材の話になりますが、「通常のポリエチレン」の分子構造は、線状に並んでいます。
この「通常のポリエチレン」分子を特殊な化学結合で結び(※分子間に橋を架けて補強する=架橋)、網目状にしたのが「架橋ポリエチレン」です。
これにより、耐熱性(最高使用温度95℃)、耐クリープ性などが大幅に向上します。
使用条件によりますが、一般の給水給湯の用途で、耐用年数が30年以上の実績報告もあります。
▼オユポリチューブ(被覆架橋ポリエチレン管) 呼び径13A(メーカー:イノアックコーポレーション)
▼被覆材を除くとこのようになります。
▼めねじ付ソケット 呼び13A×Rc1/2(メーカー:JFE継手)
架橋ポリエチレン管継手の接続
呼び13A同士を接続します。
▼架橋ポリエチレン管とチーの接続
そのまま押し込むだけで接続できます。
よくある質問
一度はめ込むと外すことはできません。
PC
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